会頭挨拶

第120回日本皮膚科学会総会
大会テーマ「Dermatologic Dermatropic Dermatrophic」

会頭 大槻 マミ太郎

会頭 大槻 マミ太郎
(自治医科大学皮膚科学講座 教授)

第120回 日本皮膚科学会総会の見どころ

このたび、第120回日本皮膚科学会総会を、令和3年6月10日(木)から13日(日)の4日間にわたり、パシフィコ横浜で開催いたします。コロナ禍から抜け出ることはまだできないと思いますが、皮膚科医ならびに関係者の皆さまを、会頭として全国からお迎えできることを光栄に存じます。

学会のテーマは、「Dermatologic, Dermatropic, Dermatrophic」としました。3つのうち2つは造語ゆえ、このように決めた意図を説明させていただくと、今を遡ること約70年、1952年のJAMA 149:82にcorrespondenceとして掲載されているWerner Steinbergの提言、“TROPHIC vs TROPIC”からヒントを得たものです。当時、trophicとtropicは論文の中で混同されており、例えばgonadotrophic(性腺刺激)、luteotrophic(黄体刺激)と呼ばれるホルモンは、hypertrophicやatrophicなど“栄養”を意味するτρoφηというギリシャ語に由来するのですが、本来は“向性”を意味するτρoπηに由来する“—tropic”を用いるべきである、という主張です。そこで私は、皮膚科に様々なことを(注目も含めて)向かわせる、そして結果的に皮膚科を繁盛、発展させたいという意味で、両者を並べて使いたいと考えました。3つ並べたのは、語呂がいいというのが理由ですが、学問(—logic)が重要であるのは言うまでもありません。また、学会ロゴはその目で見ないと分かりませんが、実はスパイクをもったコロナウイルスを(宇都宮)餃子で封じ込めているイメージ、もう一つ付記すると、学会ポスターにある日光三猿(2013年の東部支部学会を踏襲したものです)の1つは、皮膚科の伝家の宝刀、液体窒素をもってコロナ退治に向かうイメージをデザインしています。

世界を一変させた新型コロナウイルス。1年前に私は副学長を拝命し、My働き方改革が60の手習いでスタートしたところでしたが、1年も経たぬうちに全学のコロナウイルス対応の司令塔を命ぜられ、全寮制を掲げる医学部学生750名の全国帰省と帰寮のマネジメントを含め、“ステイ本部” の生活となりました。そしてオリンピック2020の延期とともに、日本皮膚科学会が企画する学会は総会・支部学術大会を含め、2020年はすべて完全WEB開催となったところですが、ひとつ確実に言えるのは、今後の学会にWEBを取り入れることがnew normalとなるのは疑う余地がないということで、今回の総会では、web参加以外に直接的な交流も可能なハイブリッド開催を目指して準備しています。一方、会期を通じてのEnglish Speaking Sessionを含め、国際化を着実に推進してきたこれまでの総会とは一変せざるを得ない現実もあり、天谷先生から引き継いだ海外特別招聘講演も、次年度以降に順延となりました。今回は、いわば“純国内版”といった内容になりますが、粋を尽くして準備している次第です。

今年の土肥記念国際交換講座は、トレド大学およびサウスウェスタン大学名誉教授のAkira Takashima 先生です。特別講演としては、青山学院大学教授の福岡伸一先生に「生命を捉えなおす ―動的並行の視点から―」、東京大学工学部長の染谷隆夫先生に前年度に引き続いて「皮膚センサーのヘルスケアと医療への応用」、東京大学教授の濡木 理先生に「広がるゲノム編集のターゲット(仮題)」、大阪大学教授の岡田随象先生に「ヒトゲノム・オミクス解析の最近のトピックス」を、また文化講演としては三遊亭円楽師匠に「(コロナ禍でも役立つ)笑いと健康」をお願いしています。会頭特別企画としては、「日本医師会COVID-19有識者会議より」、「Dermatropic/trophic 他科領域と繋がる皮膚科研究」、「Epidermotropic 皮膚病理」、「好発部位の謎に迫る」、「皮膚科レジェンドのアーカイブ掘り出し」、「AIが切り拓く未来の医療」、「宇宙医学と加齢医学の接点(仮題)」などを予定しています。また、慶應義塾大学から襷を渡されたデルマトオーケストラは、ベートーベンの第九のフル演奏は実現困難としても、現地集合でできる限りの演奏を行って全国にライブ配信したいと考えています。

自治医大の皮膚科学教室は本学の性格上、長年にわたって卒業生の入局がなく、現在の卒業生スタッフは2016年に36年ぶりに入局した1名のみ、という小さな医局ではありますが、慶應義塾大学から受け継いだ襷を繋ぎ、有意義な学会となるよう最善を尽くす所存でおります。本学会が新しい皮膚科学を展望するとともに、医学全体の発展に繋がることを願って、教室員および学会事務局一同、心よりお待ちしております。